今回の出張で、もうひとつお土産で買ってきたものがある。
日本でも10/6に発売されていたらしいが、Brian Wilsonの"Smile"
である。HMVでJPY2,625になっているが、向こうでは$15だった。
さてこのSmileだが、幻のアルバムらしい。
HMV レビュー
6年振りの新作『ゲティン・イン・オーヴァー・マイ・ヘッド』をリリースしたばかりのブライアン・ウィルソンが次に届けてくれたのは、37年前に着手しながらも幻に終わったあの『スマイル』。
1967年の『ペット・サウンド』リリース後に発売が予定されていた今作は先行シングルとしてリリースされた“グッド・バイブレーション”が全米No.1を獲得するなど世界的にリリースされるはずでした。しかし、直後にブライアン・ウィルソンが精神的破錠をきたし制作を中断、以降音楽史上において最高最後の未完成作品として伝説として語り継がれていましたが、ブライアン・ウィルソン自らが全曲ニュー・レコーディングをし37年の歳月を経て、遂に日の目を見ることとなりました!全世界のポップス・ファンが待ち望んだ幻の名盤の復活、今年最大の話題を呼ぶこととなるでしょう。
これまで聴いたことのある曲が2曲。すなわち、2. Heroes and Villains (英雄と悪漢) 17. Good Vibrations。どうしても37年前の音のつくりと比べてしまうのは致し方があるまい。
録音技術が比べ物にならないから音場の広がりや音のキレについては、当然今回のほうが段違いにいい。アレンジや音は、現在のBrianができる限り37年前に作りたかった音を「再現」しているように思われ、その点は好感がもてる。Good Vibrationsで使っていた「テルミン」を今回も使ったかどうか知らないが、同じようなヒヨヒヨ電子音も再現されている。ハーモニカが裏返るところ、微妙にホンキートンクしているピアノ。
むむ、と唸った。
が、今のBrianにはどうしても表現できないものがある。もし、仮に37年前幻の盤と今回の盤と両方手に入れられたとして、どちらに軍配を上げるかといえば、僕は間違いなく旧い方を推す。
決定的な違いは何か。
Brianの声だ。これだけはいかんともしがたい。
Pet Soundsにしても、旧盤のGood Vibration / Heroes and Villainsにしても、Brianの声に若さがある。艶がある。
新盤は、広い音場、楽器から出る音のキレが抜群だ。もちろん曲もアレンジも歌詞も秀逸な楽曲が揃っているので、もしこれが予定通りリリースされていたら、HMVのアルバム評価第1位も、Pet SoundsではなくSmileだったかもしれない。
でも、この新盤はむごい。音がとてつもなく美しいだけに、そこに一人艶消しの粘っこいBrian老人の声を聴かされるのがとてもつらい。老いというのは残酷なものだ。いちリスナーの意見としては、37年前のBrianをタイムマシンを使ってでももってきて欲しかった。